先日開催した「【期間限定Q&Aコーナー】西谷先生に聞いてみよう!」では、たくさんの方々にご参加いただきありがとうございました!今回はその中から、ねこさんの肥満やダイエットに関する質問をピックアップしてご紹介します。

ねこさんの肥満が気になったら

今回のQ&Aコーナーにお寄せいただいた「肥満・ダイエット」に関するご質問は以下の2件です。

Q. シニア猫の療養食以外のダイエット方法は何がありますでしょうか?

Q. なかなか体重調整が上手くいきません。ごはん以外に工夫できることはありますか?

適正体重を保つことは、ねこさんの健康寿命にとってとても大切なことです。今回いただいたご質問では、飼い主様がねこさんのダイエットに取り組まれている中で、食事の調整(療法食)だけではなかなか効果が上がらないという状況に直面されていることがわかります。

当院でも「ねこさんの肥満が気になる」「ダイエットをした方が良いでしょうか?」というご相談をお受けします。まずは「肥満」の定義について、また基本的な対応について解説していきます。

そもそも「肥満」とは?

ロイヤルカナンウェブサイトより

人間では身長や体重を元に肥満の程度を判断しますが、ねこさんの場合は、体重ではなく体型を基準として判断します。その子の骨格に対して適正な体型であるかを見るため、同じ猫種であっても個体によって適正体重は異なるということになります。この際基準となるのが「ボディ・コンディション・スコア(BCS)」で、ねこさんの見た目と触れた状態から体型を9(または5)段階で評価するものです。BCSは環境省が出している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」にも掲載されています。

▶環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」

▲こちらのねこさんはBCS 6/9の判定になります。

BCSに基づいて「太りぎみ」または「太っている」の判定が出た場合、動物病院ではその子の適正体重を計算し、「肥満」について対応していくことになります。

ねこさんの肥満は、間接の疾患や糖尿病などの発生リスクが高くなります。健康寿命のためにも早めに取り組んでいただきたいテーマですので、「気になるな」と感じた場合は様子を見ずに動物病院までご相談いただけたらと思います。

ねこさんのダイエット

さて、前項の通り「ダイエットが必要」との判断が出された場合、以下の順番でダイエットを進めていきます。

  1. 適正体重を把握する

ねこさんのBCSや現在の体重などからその子の適正体重を計算して割り出していきます。動物病院ですぐに対応することができます。

2. 食事の現状を把握する

ねこさんが一日にどんなものをどのくらい食べているのかを教えていただきます。栄養量も把握するために、食事の内容についても確認します。食事量に問題はなくても、おやつを食べすぎている場合もありますので、間食についても詳しくお聞かせください。

3. カロリー計算によってダイエット計画を立てる

適正体重に対して食事量が多すぎるという場合は、食事量の管理から始めます。これだけで効果が出る場合もあります。もしすでに量の調節ができている場合には、必要な栄養素は摂取しながら減量するための療法食に切り替えることをご提案します。

※普段の食事(総合栄養食)の量を減らしてしまうと、筋肉や臓器に必要な栄養素が満足に摂取できず代謝が落ちてしまうリスクがあり、おすすめしません。

4. 定期的に計画を見直す

人間のダイエットでもそうですが、飼い主様お一人だけで頑張り続けることはとても大変です。当院では状況に応じて定期的な計画を見直すようにしており、ねこさんが無理なく体重を減らすことができるように飼い主様に伴走します。

ねこさんのダイエット、食事以外に考えたいポイント

今回いただいたご質問では、すでに食事管理(療法食)を行っている飼い主様からのご相談でした。既にご説明した通り、ねこさんのダイエットでは食事管理が基本となります。しかし、どうしてもそれでは行き詰ってしまうという方に向けて少しだけ追記させていただきます。

  1. 必要な運動が適切にできているか

人間は「ダイエットをしよう」と思ったら、積極的に行動に移すことができます。運動もその一つです。しかしねこさんはそうはいきません。室内飼育の猫さんの場合、キャットタワーやキャットウォークで上下運動をたくさんさせることは大事なことですが、運動だけでダイエットを行うということは基本的に難しいでしょう。ただし、全く運動していない場合は、やはり筋肉量が落ちて代謝が悪くなっている可能性もあり、必要な運動が適切にできているかということは必ず確認します。

2. 食事量が少なすぎないか

「代謝を落とさない」という観点では、「食事量が少なすぎないか」ということも確認します。ダイエットによって本来必要な栄養素が十分に摂取できていない状況になってしまうと、一時的に体重は落ちるものの、その後停滞期に入ってしまったり、別の疾患につながってしまったりというリスクが出てきます。食事量については、必ず獣医師の指示を守って量を減らしすぎないということも大切です。

3. 過度なストレスにさらされていないか

人間と同様に、ねこさんも過度なストレスによって過食してしまう場合があります。このような場合は食事管理だけでなく、ストレスケアの点も考えていきます。

おわりに

ねこさんのダイエットでは、食事管理が基本的な考え方になります。しかし、「どうしても療法食を食べてくれない」などのお悩みをお持ちの場合は、上記のような多角的なアプローチで解決へ向けて伴走いたします。また、当院では療法食の種類も豊富に取り揃えております。ぜひ一度ご相談ください。

※療法食は、獣医師の指導の下で使っていただく治療用の食事のことです。