今月、北海道内でのSFTS(重症熱性血小板減少症候群)が初めて確認されたというニュースを目にされた方も多いのではないでしょうか。SFTSはマダニが媒介するウイルス性疾患で、ウイルスを保有するマダニに咬まれて発症します。人間だけでなくねこさんも同じように発症するほか、SFTSを発症したねこさんから人間への感染も報告されています。
過去最多のペースで増加しているSFTS。今回はねこさんのSFTS感染対策について、今すぐできることをまとめました。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
SFTSはウイルスを持ったマダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群」のことで、2013年に国内で初めて感染が確認された新興感染症です。これまでは西日本地域を中心に感染が確認されていましたが、今年に入り関東地域で、今月には北海道内での感染が確認され、国内での感染が急速に広がっています。
ねこさんもSFTSに感染します
人間だけでなくねこさんをはじめとするペットもSFTSに感染・発症することがわかっています。とくに、ねこさんは感染・発症から重症化までの経緯が短く、マダニに咬まれてから6~14日で発症します。
初期には発熱、元気・食欲低下、嘔吐、下痢などの症状が認められ、ねこさんでは60~70%で死に至る非常に恐ろしい感染症です。
詳しくは、こちらをご覧ください。
屋内飼育のねこさんもSFTSの感染リスクがあります
屋内飼育のねこさんが一時的に屋外へ逃げてしまい、マダニに咬まれてSFTSに感染したというケースが報告されています。このように、屋内飼育で十分注意していても何かのきっかけでねこさんが屋外へ脱走してしまう可能性は十分考えられます。また、事故や自然災害などの非常事態においては、注意が行き届かず、窓やケージの隙間からねこさんが逃げてしまうリスクもあります。屋内飼育のねこさんもSFTSへの対策は必要です。
ねこさんからねこさん、またねこさんからヒト、ヒトからヒトへの感染があります
マダニに咬まれていなくても、感染したねこさんから別のねこさんへ感染することがあります。また、動物病院でSFTSの治療にあたった獣医師や看護師がSFTSを発症したという事例が報告されているため、SFTSはねこさんから人間へ感染することもあります。今年、SFTSのねこさんの治療を行った獣医師が残念ながら死亡してしまうという事例が初めて発生・報告されました。
この機会にSFTSの危険性について今一度確認し、対策を徹底しましょう。
SFTSへの対策
ねこさんの飼い主様が今すぐできるSFTSへの対策をまとめました。
マダニに咬まれないようにする
人間の場合は、草むらなどマダニが生息する場所では、肌の露出を少なくすることが大切です。ねこさんの場合はそのような対策は難しいので、屋内飼育を徹底し、屋外への脱走に気を付けることが大きなポイントとなります。
しかし、ねこさんの脱走を100%予防することは難しいでしょう。そのため、ねこさんにはマダニ用予防薬を活用することが重要です。当院では、「ブラベクトプラス(フィラリア・ノミ・マダニの予防薬)」などのオールインワンタイプをおすすめしています。「ブラベクトプラス」の場合は、一度の投与で効果が3か月持続するので、年4回の投与になります。いつでも開始することができますので、マダニ予防を希望される方はご予約の際にお知らせください。
マダニに咬まれたら無理に取らずに病院へ
もしねこさんがマダニに咬まれた場合、無理に取らずに動物病院へ受診してください(これは人間の場合でも同様です)。吸血中のマダニをつまむと、マダニの体内にあるウイルス粒子を口からねこさんの体内に押し込むことになるからです。また、マダニをつまんだ時にマダニの頭と胴体がちぎれて、頭部が皮膚から除去できなくまってしまうリスクもあります。
耳や目の近くや肛門などの肌の薄い部分が咬まれやすいと言われていますが、全身どこでもマダニに咬まれる可能性はあります。もしねこさんが屋外に出てしまった場合は、必ずマダニが付いていないかを確認してください。吸血したマダニは膨らんでイボのように見えることもあります。
マダニが付いていなくても、屋外に出た経歴のあるねこさんはSFTSへの感染リスクがあります。SFTSの症状は、高熱、嘔吐、黄疸、食欲不振などです。これらの症状が出た場合は、マダニが体に付いていなくてもすぐに動物病院を受診してください。
ねこさんとの過剰な接触は控える
SFTSをはじめとする動物由来感染症などへの飼い主様の対策として、飼育しているねこさんとの過剰な触れ合いは控えてください。とくにねこさんがSFTSに感染しているリスクがある時(屋外に出てしまった履歴がある場合や体調不良の時)は、噛まれたり舐められたりしないように細心の注意を払ってください。
もし飼い主様が不調を感じた場合はすぐに医療機関を受診してください。
おわりに
マダニが媒介するSFTSからねこさんを守るための対策をご紹介しました。北海道内では室内飼育のねこさんが多いため、「屋外には出ないから大丈夫」と考えている方も多いかもしれません。しかし、脱走をきっかけにSFTSに感染してしまったねこさんのケースも報告されています。室内飼育のねこさんであってもしっかりと対策して備えていただければと思います。SFTSについて気になることがありましたら、当院獣医師までご相談ください。