ねこさんの特性の一つに、環境の変化に敏感であり、恐怖を感じた場合には迅速に反応しようとすることがあります。動物病院のように普段と異なる環境に置かれると、ねこさんは逃げ出そうとしたり、威嚇したり、さらには自己防衛のために攻撃したりというような行動を取ってしまう場合があります。一度そのような「恐怖」体験をしてしまうと、次に病院に連れて行こうとしてもなかなかキャリーに入ってくれず困っているというようなお話も伺います。
当院では、そのような事態を避け、ねこさんたちがリラックスして診察を受けられるよう、ねこさんの特性に合わせた細やかな配慮を心がけています。診察室や待合室などの施設面でねこさんのストレスを軽減する工夫を行っているほか、スタッフ一同ねこさんが安心できるような穏やかなハンドリングを心がけております。当院は「ねこさんの特性を理解し、より優しい病院になるよう工夫がされている病院」の基準をクリアし、イギリスの国際ねこ医学会(ISFM)からキャットフレンドリークリニックのゴールドレベル認定も取得しております。
今回ご紹介するのは、そういった当院の「キャットフレンドリー」な取り組みの一環としておすすめしているキャリーケースのご紹介です。
ねこさんの気持ちに寄り添う上部開閉可能なキャリーケース
イギリスの国際ねこ医学会(ISFM)では、キャットフレンドリーなキャリーケースとして「丈夫で猫が逃げ出しにくく、尚且つ、猫が出入りしやすく、飼い主と病院スタッフが容易に猫を出し入れできる必要がある」と定義づけしています。また、清潔で消毒しやすいという観点も加え、上部が開くプラスチックのキャリーケースが望ましいとしています。
▶日本ねこ医学会(JSFM)のページにISFMの基準についての説明があります。
こちらの基準を受け、当院でも飼い主様には第一の選択肢として上部が開くプラスチックのキャリーケースをおすすめしています。最近では上部だけでなく横も開くタイプ(ダブルドア)のキャリーケースもあり、そちらも推奨しています。
上部が開くタイプのキャリーケースの良いところは、ねこさんが動物病院に到着した際、すぐにケースから出なくても良いという点です。不慣れな環境で警戒しているねこさんをケースから無理やり出さなくて良いので、ねこさんのストレス軽減につながります。当院では、まずはねこさんがケースに入っている状態でできる範囲での診察を行い、徐々に診察台に出てきてもらうなど、段階を踏んで病院環境に慣れていただくように配慮しています。「病院が苦手」というねこさんでも、ほとんど問題なく診察させていただいております。
通院スタイルによってはリュックタイプを選ぶ方も
飼い主様によっては、徒歩や公共交通機関で通院される方もいらっしゃるかと思います。そのような場合には、リュックタイプをおすすめすることもあります。
リュックの場合も上記と同様の理由で、間口が大きく開き、ダブルドア(二方向から開閉可能)であることをポイントとしてお選びいただくと良いです。
なお(今回のトピックからは離れてしまいますが)リュックタイプは避難用として役に立つことから、防災面で用意しておくと便利なアイテムです。
ねこさんをキャリーケースに入れる際の工夫ポイント
とくに警戒心の強いねこさんや初めて通院するねこさんは、何かのはずみにドアロックやドア自体が開いてしまうなどの万が一の場合に備え、脱走予防の工夫をしておくことをおすすめしています。
脱走予防の一つ目は、ねこさんにハーネスとリードをつけてキャリーケースに入れておくという方法です。リードはキャリーケースの一部にしっかりとくくりつけておきます。
二つ目は、ねこさんを洗濯ネットに入れてからキャリーケースに入れるという方法です。ハーネスやリードをお持ちでない方でもすぐにできる方法なのでぜひ覚えておいていただけると良いかと思います。
なお、これらの対策は万が一の被災時に避難所で生活する場合にも役立ちます。外出に慣れているねこさんでも、普段からできる防災対策として取り組んでみてはいかがでしょうか。
おわりに
今回は通院時におすすめのねこさんのキャリーケースについてご紹介しました。当院では、特定のメーカーや商品をおすすめしていませんので、キャリーケースを選ぶ際の大まかなポイントとして読んでいただけたらと思います。なお、キャリーケースの選び方や通院に関するお悩みやご相談などございましたら、ご来院の際にスタッフにお伝えください。できるだけ具体的にアドバイスさせていただきます。