ねこさんは本能的に顔や口の周りを触られることを嫌がるため、「しっかりと歯みがきをしてあげられない」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
今回はねこさんのデンタルケアの基本的な考え方について解説します。
ねこさんのデンタルケアは「無理のない範囲で気長に」
歯や歯茎(歯肉)の汚れは歯石や歯肉炎、さらには歯周病へと進行するリスクがあるため、お口の中はできるだけ良い環境に保ってあげたいものです。しかし、いくら歯みがきが大切だからと言って無理強いは禁物。小さなことから少しずつ、ねこさんのストレスにならない範囲で継続して行うことが大切です。
以下は、当院でご案内するデンタルケアの始め方です。ポイントは、ねこさんが少しでも嫌がる素振りを見せたらすぐにやめること。一つ前のステップに戻り、ゆっくりゆっくり進めていきましょう。
- 口周りを触るトレーニング
まずチャレンジしたいのは、ねこさんの口周りを触るトレーニングです。ねこさんが好きな味のもの(歯みがきジェルなど)を飼い主様の指に少量つけていただき、それをねこさんになめさせながら口の周りを優しくタッチします。飼い主様がねこさんの口周りを触ることができたらしっかり褒めてあげましょう。このトレーニングを繰り返し行いながら、ねこさんの口周りだけでなく、歯や歯茎(歯肉)も触れたりなでたりしてみて下さい。
- 歯みがきシートに挑戦
次にチャレンジしたいのは歯みがきシートです。シートはそのままの状態ではなく、飼い主様の指にまきつけて使います。このステップでも、まずはシートを巻き付けた指でねこさんの口周りを触ることから始めます。そうして徐々に歯や歯茎(歯肉)をタッチする時間を増やしていき、歯を一本一本みがけるようになればOKです。上手にみがけたらねこさんをたくさん褒めてあげて下さいね。
- 歯ブラシでケア
いよいよ本格的な歯ブラシの登場です。指にはめるタイプや柄の短いタイプなどがありますので、ねこさんと飼い主様が一番使いやすいと感じるものを選んでお使いください。ゴシゴシみがくのではなく、優しくみがいてあげましょう。
短い時間でも良いので、毎日続けられることを見つけて取り組んでみて下さいね。
どうしても嫌がる場合は?
前項で紹介したやり方で進めてはみたものの、「どうしてもうまく行かない」「次のステップへ進めない」と難しさを感じる方もいらっしゃいます。その場合は無理に進まず、ねこさんも飼い主様もストレスなくできることだけを続けましょう。
最近は、しっかり噛ませるタイプの歯みがきおやつや、飲み水に混ぜるだけで口内環境を改善するものなど、さまざまなデンタルケア商品もあります。歯みがきで行き詰っている飼い主様はぜひ一度ご相談ください。
定期的な病院受診でお口の状態を確認しましょう
毎日のデンタルケアに加え、欠かせないのが病院での歯科健診です。気になる症状がなくても、1年に1回はねこさんのお口の中の状況を確認し、必要に応じて歯石除去などを行うと安心です。
ねこさんは人間と比べると虫歯の発症は少ないと言われていますが、歯石や歯肉炎が悪化すると歯周病の発生リスクが高くなります。歯周病の治療は痛みを伴うため、麻酔処置が必要になります。
また、定期的な歯科健診だけでなく、ねこさんが口や歯を気にしている様子が見られた場合もぜひご来院ください。以下は歯周病が進行しているねこさんの様子(一例)です。
- 食事の際、ドライフードがポロポロと口からこぼれてしまう。
- 頭を振りながら食べている。
- 食欲はあるのに食べ物を口に含んでも口から出してしまう。または食べようとしない。
- 食後、口を気にして口の周りを触っている。
- ヨダレが多い。口の周りがヨダレで汚れている。
- 口臭が悪化している。
おわりに
ねこさんの場合「デンタルケア=歯みがき」ではありません。まずはねこさんの口周りを優しくタッチし、歯や歯茎(歯肉)を触れられるようになるところから始めていきます。ステップを踏んで、ねこさんも飼い主様もお互いにストレスのないデンタルケアに取り組んでみて下さいね。