トイレに関する困りごとは、他のねこさんと比べられない分、病院に行くべきかどうか悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。お腹の不調は目に見えないので、便をしっかりと観察し、必要に応じて病院を受診していただくことがとても重要になります。
今回は、ねこさんのお腹(便)の不調について、病院受診の目安と受診の際のポイントについてご紹介します。
お腹(便)の不調かも?と思ったらまず確認していただきたいこと
〇 便(下痢や軟便)以外にも症状がある場合
嘔吐がある、食欲がない、ぐったりしているなど、ねこさんに便以外の症状がある場合は、迷わず受診をおすすめします。
〇 便(下痢や軟便)以外の症状がない場合
上記のような便以外の症状がなく、ねこさんに元気な様子が見られる場合は、受診を急ぐ必要はありません。悪化がなく、日を追うごとに改善するようであれば様子を見ましょう。しかし、便の不調(下痢や軟便)が3週間以上継続している場合は、ねこさんが元気であったとしても何かしらお腹に不調を抱えている可能性がありますので受診をおすすめします。
※軟便の基準:便をつかんだ時に形が崩れてしまうものは軟便にあたります。軟便の場合でも3週間以上続く場合は便異常となりますので、一度病院を受診されることをおすすめします。
お腹(便)の不調で受診される際の注意点
▲当院でご用意している便検査容器
上記のどちらのパターンでも、お腹(便)の不調で来院される際は必ず便検査を行います。病院受診の前に便を採取していただけると便検査をスムーズに行うことができます。当院で専用の容器をお渡しすることもできますので、ご希望の方は事前にお申し出の上、お手数ですが受け取りに来ていただきますようお願いします。なおご自宅で採便される場合は、適量(親指の第一関節くらいの量)を採取していただき、密閉容器に保管してください。受診日かその前日など、出来るだけ新鮮な便を採取していただくようにお願いします。
また、問診時にフードについてお聞きしますので、普段お使いのフードのメーカー名や商品名について(メモしておくなど)あらかじめご準備いただけますと有難いです。
検査や治療について
ねこさんのお腹(便)の不調でご来院いただくと、まずは問診と便検査(必要に応じて触診)を行います。飼い主様のお話を伺い、ねこさんの状態を観察しながら検査を進めますが、ほとんどの場合、最初に感染症(寄生虫やウイルス、細菌性の感染など)の可能性を調べていきます。
その後、必要に応じてエコー検査や血液検査、場合によっては内視鏡検査などを行います。
これらの検査を経て診断が確定すると、それぞれの疾患に合わせた治療を開始します。また、消化器疾患の場合、治療と合わせて食事を見直していくことが非常に大切になりますので、普段のねこさんのお食事の改善と合わせて療法食のご提案をさせていただくこともあります。
炎症性腸疾患による慢性腸症をお持ちのねこさんの中には、通常の治療だけではなかなか効果を感じられない場合もあり、あらゆる治療法を試したいとお考えの飼い主様もいらっしゃるかと思います。こうした慢性腸症への新たなアプローチとして、当院では通常治療に加え、「再生医療」や「腸内フローラ移植」などの治療法も選択肢の一つとしてご提案できます。ご興味をお持ちの方は一度ご相談ください。
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おわりに
ねこさんの健康寿命を延ばすためにも、早めに受診を心がけていただくことはとても良いことです。一方で、ねこさんは環境の変化に敏感な動物なので、度重なる来院がストレスとなってしまうリスクもあります。今回はお腹(便)の症状について、当院の獣医師が考える来院の目安について解説してみました。ぜひご参考にしてみてくださいね。