当院では、治療の一環として処方薬のほかに療法食(フード)のご提案を行うことがあります。療法食とは、特定の疾患や症状に特化した治療用の食事のことで、基本的に獣医師の判断が必要となります。
最近では、量販店やオンラインショップなどでも総合栄養食や栄養補助食として特定栄養素を補給する製品も販売されています。しかしこれらは一般食であり、病院でご提案する療法食とは全く異なる製品です。今回は療法食と一般食の違いについて解説してみたいと思います。
療法食と一般食の違い
療法食を出しているメーカーのほとんどで、一般食も出していること、また一般食でも対象年齢や疾患が書かれていたりすることなどから、療法食と一般食との見分けがつきにくいと感じる方も多いかもしれません。
しかし、療法食と一般食は全く別の製品であり、基本的には、療法食は病院を通さなければ購入することができません。療法食は、特定の疾患や症状に特化した治療用の食事のことで、症状に合わせて含まれる成分も調整されています。消化器疾患用、アレルギー用、腎臓病用、尿石用、肝臓病用など疾患によって種類が異なるのはもちろんのこと、術後の回復期に一時的に食べていただくものから日常的に取り入れていただくものなど使い方もさまざまです。病気のステージごとに内容を変えていく種類の療法食もあるため、定期的な検査と診療に基づいて、その時々で獣医師が最適なものを判断し、治療に合わせてご提案するというのが原則となります。療法食ではパッケージに獣医師専用や動物病院専用と書かれています。
もし、特定の疾患用の療法食をその疾患を持っていないねこさんが食べてしまうと、栄養バランスが崩れてしまったり、ある栄養素の過剰摂取になってしまったりといったリスクが考えられます。つまり、療法食は獣医師の判断なしには基本的には使えません。
一方で栄養補助食や総合栄養食として量販店などで販売されている一般食(療法食ではないもの)は、疾患の有無に関わらず誰が食べても良いように作られているので、獣医師の判断がなくても購入することができます。手軽に購入できるという利点はありますが、治療用のフードではないため、治療効果という点ではほとんど期待できません。
療法食は「継続すること」と「定期的な診察」が大切
獣医師から療法食の提案があった場合は、一度きりにはせず、ぜひ必要な期間「継続して」療法食の摂取をお願いします。療法食は、継続することによって治療効果の有無(その療法食が治療に最適かどうか)を判断できるからです。途中で治療食をやめてしまう(一般食に切り替えてしまう)と、獣医師が治療効果について判断できず、満足な治療効果を得られなくなってしまう可能性があります。
また、治療用の食事なので、定期的な診察も大事です。治療効果が出ていればもちろん継続となりますが、効果が不十分であったり、別の疾患を発生していたりする場合は、療法食の内容の見直しが必要になるケースもあります。
ねこさんの療法食に関するFAQ
療法食に関しては、以前以下のブログ記事でも取り上げたことがありましたが、まだ「よくわからない」と感じている方も多いかと思います。当院によくお寄せいただくご質問と、その回答をご紹介します。
療法食はどうやって購入できますか?
当院では、獣医師が診療を行い、ねこさんに療法食が必要だと判断した場合、まずは数回分のサンプルをお渡し、療法食の購入方法を直接お伝えしています。
当院では患者様専用ラインアカウントがあり、そちらから注文を行っていただくパターンが多いです。メーカーから直送できる場合と病院まで取りに来ていただく場合があり、療法食のメーカーや種類によって異なります。日常的にラインをご利用されていない方の場合は、お電話での注文も可能です。
ねこさんが療法食のサンプルを食べてくれない場合はどうすれば良いですか?
療法食の種類にもよりますが、当院では最初にメーカーや味の異なるサンプルを2~3種類お渡しして、ねこさんが一番好きなものを継続していただくようにしています。しかし、ねこさんによっては「なかなか療法食を食べてくれない」「最初は食べてくれたけれど味に飽きてしまったようだ」などのお悩みもあるようです。そんな時は、当院までお電話でご相談ください。さらに別の種類の療法食をご提案したり、与え方を工夫する方法をお伝えしたりして、なんとかねこさんが療法食を頑張って続けられるお手伝いをさせていただきます。
既に購入してしまったフード(一般食)がまだ残っているので、療法食と混ぜて与えても良いですか?
基本的には療法食はほかのフードとは混ぜずに食べていただくことが前提になります。ただし、疾患の種類や状態によっては何かしら工夫できることがある場合もありますので、まずは病院までご相談ください。
おわりに
当院では、治療の重要なポイントの一つとして療法食を取り入れています。毎日の生活にしっかりと取り入れていくと、十分な効果を見込めることも多いので、ぜひ諦めずに継続していただきたいと考えております。療法食について、疑問や不安なことがございましたらぜひお気軽に当院獣医師までお問い合わせください。