猫さんの慢性腸炎や慢性口内炎でお悩みの飼い主様に、補助治療として再生医療(幹細胞療法)のご提案ができるようになりました。従来の治療法に加え、「もっとできることはないだろうか?」と新たな治療法をお探しの飼い主様は、ぜひ一度ご相談ください。
再生医療(幹細胞療法)とは
今回ご紹介する「再生医療(幹細胞療法)」は、生きた細胞を体内に投与する治療です。この治療法では、幹細胞が持っている免疫調整作用や抗炎症作用を利用して、臓器や組織の修復や症状緩和を目指します。従来の治療法では改善が難しい疾患に対しても効果が出たという症例も報告されており、新しい治療法として世界中で今研究が進められています。
投与方法は、基本的に点滴投与となります。治療期間や頻度については、猫さんの体調や疾患によって異なります。
当院では動物再生医療技術研究組合(PARM)が提供する細胞治療を採用しています。本サービスでは、臨床研究の一環として行われるため、検査を受けていること、標準治療を行っていることなどの条件を満たしている必要があります。健康な個体から採取された組織から培養された細胞を患者様(猫さん)に投与する「他家」細胞移植を行います。猫さん自身の組織を採取する必要がないので、猫さんへのストレスが少なく、計画しやすい点がメリットと言えます。
再生医療(幹細胞療法)の注意点
新たな治療法ということで、再生医療(幹細胞療法)に興味を持たれる方も多いと思います。よくご質問いただく点について以下簡単にご説明します。
●再生医療(幹細胞療法)はあくまで補助治療となります
当院でご提供する再生医療(幹細胞療法)は、単独で効果が出るものではありません。また、「炎症が全ておさまる」「病気が完治する」というイメージの治療ではなく、症状の緩和によって生活の質を上げることを目的とした治療であることをあらかじめご承知おきください。当院では、基本的な治療をしっかり続けていただいた上で、追加治療という形で再生医療(幹細胞療法)をご提案しています。
●費用負担があります
当院でご提供する再生医療(幹細胞療法)は、動物再生医療技術研究組合(PARM)の臨床研究の一環として行われる治療ですが、飼い主様による費用負担があります。金額については疾患の種類や症状によって異なるため、ご来院の上ご相談ください。なお、加入の保険会社から補助が出る場合がございます。
●慢性腸炎と慢性口内炎以外にも対象となる疾患があります
今回のブログでは、再生医療(幹細胞療法)に関して慢性腸炎と慢性口内炎についてご紹介していますが、ほかにも慢性腎臓病など対象となる疾患がございます。詳しくはこちらのページよりご確認の上、当院獣医師にご相談ください。
●当院がかかりつけ医でない方は、治療歴や検査結果、処方データなどがわかる資料をご持参ください
ほかの動物病院にかかっている方で、当院で再生医療(幹細胞療法)を希望される場合は、治療歴や検査結果、処方薬についてのデータなどをご持参ください。当院で追加治療を行える場合があります。まずは一度ご相談ください。
おわりに
慢性腸炎や慢性口内炎を患っている猫さんの飼い主様からは、従来の治療で一時的に症状が改善しても、「治療効果が続かない」「お薬の副作用が辛くて治療が続けられない」といったお声をいただくことがあります。お腹やお口の症状を少しでも和らげ、生活の質を良くしてあげたいという気持ちをお持ちの飼い主様は、一度再生医療(幹細胞療法)についてご検討されてみませんか?研究途上の治療法ということで不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。まずは一度当院獣医師までご相談ください。